第1章◎経済の「血豆」を取ることが先決

今こそ「経営者の視点」が必要イメージ

経済学者や評論家は、よく、景気状況をカラダの健康に例えて説明しますね。おカネを血液に例え、「元気がないのは、血液(おカネ)がカラダ(社会)の隅々まで回っていないから」「今、必要なのは外科手術。まず出血を止めること」などなど……。
まず、こうした“エライ先生方”の見識を「経営者の視点」で検証してみましょう。

「元気がないのは、血液がカラダの隅々まで回っていないから」という説明は、確かにその通り。でも「外科手術が必要」との見方は、私に言わせれば「見当違いもいいとこ」です。確かに「出血」はあります。でも「手術」が必要なほど重傷ではありません。
なぜなら、カラダ(国内)の中には、まだ十分な量の血液(資産)があるからです。

ここで言う「出血」とは、海外へカネが流出することです。逆に国内にカネが入ってくることは「輸血」。「外科手術」とは、こうした外国とのカネのやり取りに手を入れることですが、今、そうした「手術」が必要な状況なのでしょうか?
全く必要ありません!
確かに日本は、米国・ウォール街のずる賢い連中の仕掛けに引っかかり、かなりの「出血」してしまいました。しかしトータルで考えれば、黒字の貿易収支により、ほぼ同等額が既に「輸血」できています。だから「止血手術」や「輸血手術」をする必要はないのです。

「退蔵金」こそが不況の元凶

今こそ「経営者の視点」が必要イメージ

とはいえ、カラダの隅々に血液が回っていないのは事実。なぜでしょう?
実は、血液が回っていない原因は「出血」ではなく、カラダのあちこちに「血の瘤(コブ)」「血豆」ができているからなのです。だから、ポンプ(心臓)がいくら血液を送っても、途中で溜まって瘤を大きくするばかり。毛細血管まで流れて行かなくなっているのです。

「血の瘤」「血豆」とは「退蔵金」のことです。昨今耳にする「埋蔵金」ではないですよ(似てますが)。聞き慣れない言葉かもしれませんが、タンス預金とか、親子代々の資産とか、要するに「使わないでしまいこまれたカネ」のことを言います。
最も大きな退蔵金は、銀行や郵貯に眠っているカネです(実際には、それらは国債の購入に充てられています)。その原資の大半は、家計の預貯金や企業の剰余金。現政権は、次世代に借金をしてまでカネをバラ撒いていますが、本来ならそれらは使われてこそ有効なはずです。でも実際は、決して小さくない部分が個人・法人の金庫に入り、そのまま眠ってしまっています。これでは血瘤が大きくなるばかり。景気浮揚なんて期待できません。

「動脈瘤」「静脈瘤」といった病は、放っておけば深刻な事態を引き起こします。「退蔵金」という血の瘤をどう退治するか……それが、経済という血流をよくし景気をよくする、最も有効な方策なのです。その具体的な方法は、追い追い述べていきましょう。

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