第2章◎経済の「心臓」を強化せよ

経済の「血豆」を取ることが先決

経済とは「カネ」という血液の流れです。それがスムーズに流れるようにすることが「景気対策」です。不況……つまり「カネ」の流れが滞っている状態なら、滞留を起こしている原因は何か、しっかり見極めなければなりません。

私に言わせれば、多くの経済学者や評論家は、この原因を見誤っています。日本の景気低迷の“真の原因”は、円高でも株価の下落でも新興国の台頭でもありません。「退蔵金」という「血瘤」が、「社会」という身体の中に無数にでき、肥大化して、円滑な血流(カネの流れ)を妨げていることが原因です。この「血瘤」を“退治”すること————これこそ「真の景気対策」の“第一歩”になるのです。

と言っても「血瘤の“退治”」とは、直接取り除く“外科手術”ではありません。それでは、また血瘤ができてしまいます。溜まっている血液を流し出し、瘤が再発しないようにすることが何よりも重要。そのためには、血液の流れを「整理」しなければなりません。瘤になりやすい狭い血管は広げ、複雑に入り組んだ経路は真っ直ぐに整える……カネという血液を流れやすくするのです。その具体的な方法も、追い追い述べていきましょう。

確実に吸い上げて吐き出す仕組みを!

経済の「心臓」を強化せよ

せっかく血管を整えても、肝心の血流が弱くては何にもなりません。血液を勢いよく送り出せるよう、次は「心臓」の機能を強化する必要があります。血液を確実に吸い上げ、確実に吐き出すよう、ポンプを整備するのです。
とはいえ、必要以上の血液を吸い上げたり吐き出したりしてはいけません。必要以上に吸い上げ、勢いよく吐き出したら、血管は破裂してしまいます。出血を起こすと、身体(社会)はパニックに陥ります。その“ショック”は大きく、傷が癒えた後も「また破裂しないように」と血流を抑制するようになり、再び血瘤をつくってしまいます。バブルの絶頂から崩壊、そして不況へと続いた、ここ20年の日本の状況を見ればお分かりでしょう。

「心臓の強化」とは「血液を確実に吸い上げ、確実に吐き出す機能を強化すること」です。取れるカネは確実に取り、社会に確実に還元する仕組みを整備する……こう書くと「増税」を思い浮かべる人もいるでしょうが、これは何も、税金のことだけを言っているのではありません。「社会にカネが回ること」が重要なのですから。
とはいえ、税金も社会に還元する重要な血液であることは間違いありません。その意味では「増税」も有効な心臓強化策であることも確かです。ただし、他の方策(無駄の削減など)を採らず、いきなり増税をしたのでは、まったく意味がないでしょう。

最も大切なのは「ムラなく吸い上げる」ということ。しかし、これは言うほど簡単ではありません(吐き出すほうが易しい)。ではどうすべきか……これも徐々に説明しましょう。

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