第4章◎消費税は少しずつ、毎年上げろ

消費税は少しずつ、毎年上げろ

菅直人首相の「消費税発言」のあおりで、今年(2010年)夏の参議院議員選挙は、与党が大敗しました。政治家にとって消費税が「鬼門」であることを、改めて証明した格好です。
思えば、歴代の自民党政権も、これまで消費税で何度も痛い目に遭ってきました。
大平正芳内閣の「一般消費税構想」(1978年)、中曽根康弘内閣の「売上税構想」(1986年)はあえなく頓挫し、ようやく「消費税」の導入(1988年)に漕ぎ着けた竹下登内閣も、支持率低下で退陣となりました。この時の税率は3%でしたが、1997年の橋本龍太郎内閣で5%に。これが景気に悪影響を及ぼしたとされ、やはり退陣に追い込まれました。

これほど“痛い目”に遭っているにもかかわらず、さらなる消費税率アップを主張する政治家がいることに、私は心から敬服しています。決して皮肉っているのではありません。むしろ、真に国民のこと、日本国の成長を思っている政治家だと思います。国家の未来のためには、国民の耳に痛い事を言わなければならない場合だってあるのです。
消費税率が5%に上がった後、景気が悪化したのは事実です。しかし、上がる前の「駆け込み需要」で、一時的に景気が上向いたのも事実。上がった後に悪くなれば、後のショックの方が大きく感じられるのは当たり前、ボクシングのカウンターパンチと同じです。

段階的なアップで駆け込み需要を喚起

段階的なアップで駆け込み需要を喚起

今後、消費税論議は盛んになるでしょう。今は「10%が妥当」という声が多いようですが、断言しておきます。消費税率の引き上げ後、景気は間違いなく後退します!
引き上げ前の駆け込み需要で一時的に景気は上昇するでしょうが、引き上げ後は激しい景気後退が起こります。その“カウンターパンチ”の衝撃は、橋本内閣の時の比ではありません。1,000円の商品の消費税は「3%→5%」の時は「30円→50円」でしたが、「5%→10%」では「50円→100円」です。どちらの衝撃が大きいかお分かりでしょう。

「足りない→ならば上げよう」は政治家や学者の考え方。「経営者」は、まず「上げないためにはどうしたらいいか」を考えます。コストなどを徹底的に見直し、その上で「値上げやむなし」となったら「取引先の反発を極力抑えて上げるには、どうしたらいいか」と考えます。税制に当てはめれば「どうすれば景気後退を招かずに増税できるか」です。

答はそれほど難しくありません。「少しずつ上げていく」のです。
「毎年1%ずつ」でもいいし「半年に0.5%ずつ」でもいい。とにかく少しずつ、何回かに分けて上げるのです。これなら、一休みする間もなく駆け込み需要が起こるでしょう。せっかく馴染んだ「内税方式」を「外税方式」に切り替える必要が出てきますが、その程度の不都合は我慢すべきです。また、ずる賢い小売業者がインチキをするかもしれませんが、これもある程度までは目をつぶります。そんな些末な事にこだわっていては、国家の未来に支障をきたします。その代わり、悪質な脱税行為には、厳罰で対処することです。

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