第8章◎飲酒運転も徹底的に取り締まれ

近年、交通事故による死者数が激減しています。総務省と警察庁の統計によれば、平成2(1990)年には全国で11,227人も亡くなっていたのが、平成20(2008)年には5,155人にまで減少しました。ただし、この統計にカウントされているのは、事故発生後24時間以内に亡くなった人の数です。何日か経ってから亡くなるケースも多いことを考えると、単純に「死者数が減った」と喜ぶことができないのは言うまでもありません。
とはいえ、交通事故の「発生件数」も激減しています。近年で最も多かったのは平成15(2003)年の952,191件ですが、同20(2008)年には766,147件まで減少しました。

交通事故死者数が減少したのには、いろいろな要因があるでしょう。シートベルト着用の義務化、車両の安全性向上なども効を奏したと思います。
でも私は、最大の要因は「飲酒運転の罰則強化」だと考えています。
飲酒運転は、平成19年(2007年)の道路交通法改正で、一段と厳しい刑事罰が科せられるようになりました。「酒酔い運転」で「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」、「酒気帯び運転」でも「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。さらに、死亡事故を起こし、それが「自動車運転過失致死傷罪」とされれば「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」。加えて、同乗者や酒を提供した者(具体的には飲食店)も厳しく罰せられるとあっては、大きなリスクを冒してまで飲酒運転しようとは思わないのが正常な考えだし、気軽に酒を勧めたりしなくなるのも当然です。

交通事故は経済にもマイナス

にもかかわらず、飲酒運転が「ゼロ」にはならないのは、どうしたことでしょう?
こうなったら、さらなる厳罰で対処するしかありません。取り締まりをさらに強化し、刑事罰をもっと重くすべきです! こう言うと「厳罰化は事故の減少につながらない」と、したり顔で言う人がいます。どこを見て言っているのでしょうか? 厳罰化が交通事故を減少させたことは、火を見るより明らかではありませんか! 「厳罰化により、飲酒運転がバレることを恐れた轢き逃げが増えた」ですって? それなら一層の厳罰に処せば済むことでしょう! 法の不十分な部分は、補完すればよいだけのことです。

経済の面から言っても、交通事故の撲滅は重要です。事故によって経済活動の一部を担っていた有能な人材を失うのは、社会的観点からも大きな損失。これは被害者のことだけを言っているのではありません。同じことは加害者にだって言えるのです。
交通事故が減れば、企業にもプラスに作用します。例えば、損害保険や生命保険の会社は、支払う保険金を削減できるから、業績アップにつながるでしょう。その分のカネは、回り回って国民に還元されます。新しいビジネスだって生まれます。運転代行業やアルコールフリービールの隆盛を見れば明らかでしょう。自動車会社の売上は、少し落ち込むかもしれませんが、その程度のことは、経済全体から見れば、取るに足らぬ数字です。

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