第10章◎デノミと国民総背番号制を実施せよ

北朝鮮は昨年(2009年)の11月30日、100分の1の「デノミ」(デノミネーション:通貨呼称単位の変更)を実施しました。「昨日までの100ウォンを、今日からは1ウォンと呼ぶことにします」ということです。当然、従来の紙幣は使えなくなるので、国民は持っているカネを新しいお札に交換してもらうことになりました。
ところが北朝鮮政府は、交換額に「10万ウォン」という上限を設けました。10万北朝鮮ウォンは、日本円で3千円ほどとか。いくら物価が違うとはいえ、これはあまりにひどすぎます。結果、北朝鮮国内は大混乱に陥ってしまいました。
北朝鮮政府としてはデノミをせざるをえない事情があったのでしょう。国民が闇市場等で密かに蓄財したカネは相当な額に上っていたとか。「国民の不当蓄財を、これ以上黙視できない」と判断したのだと思います。確かに「国が把握できないカネ」はデノミで一掃されました。国は破綻寸前になりましたが、政府にとっては“成功”だったのかもしれません。

誤解しないでほしいのですが、私は北朝鮮のデノミを評価しているのではありません。国民に多大な犠牲を強いた大愚策だと思っています。ただ「デノミ」という手法自体は、退蔵金のような隠れた資産を洗い出すのに非常に有効だとも思っています。
デノミは日本こそ実施すべきではないでしょうか。20年に及ぶ不況の濃霧を払拭するには、退蔵金の洗い出しが必要です。タンス預金や借名口座等を含む全ての資産を国全体で一度オモテに出し、実態を把握しなければなりません。それにはデノミが最も有効な方法です。

プライバシーの侵害には厳罰を

デノミは「国民総背番号制」と併せて実施する必要があります。私はかねてから「国民総背番号制推進論者」です。もちろん、プライバシーの問題をはじめクリアしなければならない課題は多く、導入が簡単でないことは十分承知しています。導入された後に、さまざまなデメリットが顕在化するかもしれません。そう考えても「国民総背番号制」を導入するメリットの方が、デメリットを上回るとしか思えないのです。
経済を停滞させる「退蔵金」という「血瘤」はどこにあるか、現状では特定できません。それゆえ「国民総背番号制」は最も有効な手段となります。確実な税収の確保につながるからです。「費用対効果」を考える「経営者」の視点で見れば、「国民総背番号制」は暴論でも何でもありません。にもかかわらず、プライバシー侵害を恐れて導入できず、数百兆円もの“アングラマネー”の滞留を許しています。国家的な損失ではないでしょうか。

ただ、私は「国民総背番号制」の導入論議について回る「プライバシー問題」を、決して軽視しているのではありません。導入後、制度を悪用した事件が発生した場合には、加害者に厳罰を科すべきだと考えます。そのためにも、まずはプライバシー関係の法整備を急ぐ必要があるでしょう。国民の多くが驚くような厳罰を準備した上で「国民総背番号制」を導入する……それが、この国の経済復興の近道だと私は考えます。

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