第20章◎弱者ぶるヤツが一番強い

民主党政権は「労働者派遣法」を改定し、製造業への派遣を原則禁止する方針を打ち出しています。これに関連して、先だって興味深い報道がありました。東大社会教育研究所が、製造業の現場で働いている派遣社員4千人に調査したところ、55.3%の人が「禁止に反対」と回答したというのです。その理由で最も多かったのは「禁止しても正社員などの雇用機会は増えないから」。次いで「派遣で働けなくなるから」「正社員の仕事が見つかるまでのつなぎの仕事がなくなるから」と続くとのことです。記事は「派遣法の改定が失業につながりかねない不安を反映している」と分析していましたが、果たしてそれだけでしょうか。私は2番目に多かった「派遣で働けなくなるから」が、どうにも気になるのです。

以前、インタビューに「僕は正社員になる気はない。浦和レッズの全試合の応援に行きたいから」と答えている若者をテレビで見たことがあります。正社員という、会社と強く結ばれた雇用関係を嫌い、自由度が高い派遣という勤務形態を望む理由は「そんなもんか」と思ったものです。もちろん、すべての派遣社員がそうだとは言いません。しかし、こんな安直な理由で派遣を選んでいる人が少なからずいることも事実だと思います。 派遣は企業側が一方的に雇用契約を解消しやすいとよく批判されますが、関係の緩さは派遣される側も望んでいたことではないでしょうか。派遣を選んだからには、状況が急変して雇用を突然打ち切られる可能性があることも、あらかじめ想定しておくべきなのです。 それが、世の中が不景気になって「派遣切り」が行われると「不当解雇だ」と叫び、マスコミは「社会的弱者」に祭り上げて「彼らに死ねと言うのか」とキャンペーンを張る……ちょっとおかしいと思いませんか?

そろそろ「エセ弱者」の保護はおしまいに

事は派遣社員に限りません。例えば、あなたの近所には、自治会費を払わず、自治会活動への協力もしない住民はいませんか。自治会長さんが「もし大地震が起こったら、自治会で炊き出しをするのだから」と説明しても「その時はメシなんか要らねえ」などと言って応じない。しかし、こういう輩は本当に大地震が来た時、真っ先に炊き出しにありつこうとするに決まっています。「要らない」と言ったのだから食べさせる必要はないはずですが、そんなことをすれば「オレに死ねと言うのか」とか「社会的弱者をないがしろにした」とか騒ぎ立てるでしょう。だから自治会長さんは優しくご飯を食べさせてあげる……実に「美しい話」です。しかし、そろそろこういうことはヤメにすべきではないでしょうか?
往々にして自ら「弱者」を標榜する輩ほど、実際は「強者」なのです(ここで言う「強者」とは「社会での発言力が大きい者」といった意味です)。そして、そうした人たちの一部は、実に身勝手な理由で自らを「弱者」のポジションに置いているのです。
そんな「エセ弱者」まで保護する必要があるのでしょうか? 応分の努力や苦労をせず、勝手気ままに生きている者まで皆で助けるような“風潮”と決別しなければ、日本は「沈没」してしまいます。「努力するのがアホらしい世の中」になってしまいます。

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