第23章◎年金の支給額は子供の有無で差をつけろ

年金制度をどう改革するかは、前政権時代からの課題になっています。近年、国民年金保険料の未納者増加や、将来の受け取り額が払い込んだ保険料に見合わない「世代間格差」の問題などが指摘され、「既に制度自体が破綻している」との声まで聞かれます。しかし、年金についての議論を聞くと「多くの人が誤解しているのではないか」と思われる事が一つあります。「年金は積立貯金ではない」ということです。

昔、年老いた親の経済的な面倒は、その子供が全部していました。子供がいない者は老後の貯えに努めました。しかし、いつの世も親の面倒を見ない子供や、貯金したくてもできなかった人はいるものです。また、会社員には早くから厚生年金や退職金の制度がありましたが、自営業者や農業従事者にはそうした仕組みがありませんでした。

そこで、1961年(昭和36年)、国民年金の制度が設けられました。全てのお年寄りに年金が支給される仕組み(国民皆年金)が実現したのです。その後、制度の仕組みはいろいろ変更が加えられ、1985年(昭和60年)に現在の仕組みになりました。詳しい解説は他に譲りますが、「基礎年金」の導入により、職業の違いに関係なく、社会全体で高齢者の面倒を見る仕組みになっているのが特徴です。

国民年金は世代間の「互助会」である

ここで理解しておく必要があるのは「現在支給されている年金は、現役世代が毎月納める保険料を原資としている」ということです。支給額の全てが保険料で賄われるわけではありませんが(3分の1は国庫負担、つまり税金です)、今現役で働いている人たちが、リタイアした人たちを支える仕組みになっているのです(これを「賦課方式」といいます)。「互助会」をイメージすると理解しやすいのではないでしょうか。

ところで「現役で働いている世代」とは、今のお年寄りが育てた子供たちですね。ということは、こうも言えるのではないでしょうか。「子供がいない高齢者の面倒も、だれかの子供が面倒を見ている」……私はここに矛盾を感じてならないのです。
もちろん、子供の有無にかかわらず、今の高齢者が日本の発展に尽力した功績は称賛されて然るべきです。とはいえ、子供を産み育てた人は、育てなかった人より、さらに大変な苦労をしてきたはず。そうした人には、苦労して育てた子供たちが払う保険料が、子供を育てなかった人たちの年金にも使われることが、釈然としないのではないでしょうか。

以上のことから私は、子供の数で年金に差をつけるべきだと考えます。子供がいない人の年金は、いる人より低く抑えるのです。また、育てた子供の数に応じて支給額を高くするのです。10人育てた人は、1人しか育てなかった人の10倍もらっていいと思います。
なぜ、だれもこのような発想をしないのか……私は不思議でなりません。

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